日本企業の決算が集中する時期となりました。今回は決算作業に重要な意味を 持つ税効果会計についての情報をお知らせいたします。
【税効果会計の概要】
国際会計基準にあわせ、公開会社について平成11年4月開始事業年度より強制 適用となった会計制度ですが、現在でも非公開会社の適用は任意となっています。 わが国では、企業会計上の「利益」と法人税等を計算する上での「課税所得」が 一致していないのが現状です。税効果とは、企業会計上の利益に対して課税される 法人税等の額を適正に調整、期間配分することを目的としています。
【調整の方法】
企業会計上の利益である税引前当期利益と、法人税計算上の課税所得には、税務 上損金とならない未払費用や引当金計上など翌期に税金計算上「回収」される「一時 差異」と、交際費の損金不算入や受取配当等の益金不算入など税金計算上翌期に回 収されない「永久差異」があります。 税効果の計算は、この翌期に回収可能な「一時差異」について法定実効税率を用 いて計算された「法人税等調整額」を算出し、その計算結果について損益計算書の 税引前当期利益と合理的に対応される会計処理を行います。 このように、税効果における会計処理では、「繰延税金資産」、「繰延税金負債」 及び「法人税等調整額」という3つの科目を用いて処理しますが、このうち「繰延 税金資産」と「繰延税金負債」は貸借対照表へ、また、「法人税等調整額」につい ては、損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」の次に計上されます。ただし、 流動資産に表示された繰延税金資産・負債と固定資産に表示された繰延税金資産・ 負債は、それぞれ相殺表示されます。
【法定実効税率】
既に述べたとおり、一時差異に法定実効税率を乗じて法人税等調整額を算出します が、わが国では、事業税が課税所得の計算上、支払い事業年度において損金算入が認 められていることから、以下の算式により、法定実効税率を算定します。
法定実効税率={法人税率×(1 住民税率) 事業税率}/{1 事業税率}
この法定実効税率の算定にあたっては、決算日までに改正税法が公布されている場合 には、新税率に基づき法定実効税率を計算します。 また、本社以外に支店があり、住民税率及び事業税率が自治体により異なる場合には、 本店所在地又は分割基準の人数の多いところの税率を選択することになります。いずれ を選択するかは会社の任意ですが、継続的に適用することが必要です。
【繰延税金資産の回収可能性】
税効果会計では、前払税金部分を繰延税金資産として翌期以降に繰延べ、その払い 過ぎた部分を将来支払う税金から減額させることで回収します。しかし、将来、会社 の業績が思わしくなく課税所得が発生しなかったような場合には、それに伴う税金も 発生しませんので、その一時差異相当額を減額して回収することができません。した がって、繰延資産の計上を行うには、将来のその企業の課税所得の発生を見極めたう えで行う必要があります。このように、回収可能性の判断においては、その企業の過 去の業績などに基づき将来の収益性の予測が必要であることから実務的にも重要な意 味があると考えられています。 この繰延税金資産の回収可能性の判断要件については、個別実務指針によると、次の 3つの要件のいずれかを満たしているかどうかにより、判断することとされています。
@収益力に基づく課税所得の十分性 Aタックスプランニングの存在 B将来加算一時差異の十分性
また、税務上の繰越欠損金等についても、繰越期間内に生じた課税所得の計算上減額 することができる為、将来減算一時差異について繰延税金資産を計上する場合と同様に、 回収可能性の判断が必要となります。ただし、税務上の繰越欠損金が存在する会社は、 過年度において少なくとも1期以上は損失が生じていることになりますから、将来減算 一時差異に対して繰延税金資産を計上する場合にも増して繰延税金資産の回収可能性の 検討を慎重に行う必要があります。
作成者 渋谷業務管理部 本部長 服部宏一
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